不登校対応の支援と相談

学校に行かない子供に、親は、どう対応すべきか?

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不登校体験記
 
 
 
 
 
 
 
私が不登校を選択した日、
そのくわしい日付は覚えていません。

 
 
 
でも、中学一年生の冬、
私は学校に行かないことを決意したように思います。
 
 
 
あまりにも灰色がかった記憶のため、
今となっては冬のように感じるのかもしれません。

 
 
でも、たしかに中一のある日、
私は仮病をつかって、学校を休みはじめたのです。

 
 
こたつのなかで(あ、やっぱり冬だ!)、
体温をはかるフリをしていたことを思いだします。
 
 
体温計をワキにはさむフリをして、こたつにもぐりこみ、
こたつのなかで、体温計をこっそりワキから抜きます。
 
 
ワキから抜きとった体温計を、
こたつのなかで熱を放射している部分に近づけて、
うまく38度ちかくに設定するのです。

 
 
そして、母親に
「やっぱ、今日も熱があるみたいやわ…(語尾は方言)」と言い、「今日は休んだら?」という言葉を待つのです。

 
 
こうして、
私の長期にわたる不登校ライフが幕をあげたのです。
 
 
 
その幕は静かにあがりました。

 
 
ところが…
 
 

 

 

 

不登校体験を生かすポイント


 

 
 
 
 
 
 
不登校ライフの幕。


 
その幕は、
わずかな音も聞こえないくらい静かに上がったものの、
その先には、壮絶な舞台が用意されていました。

 
 
その壮絶な舞台では、
やがてやかましい音が鳴り響くのですが、
それは、まだ先のことです。
 
 
 
幕が上がり、舞台が見えても、
いまだ音は静かなままでした。


 
母親に
「やっぱ、今日も熱があるみたいやわ…(語尾は方言)」と言い、「今日は休んだら?」という言葉を待つ朝。
 
 
そんな朝がつづきました。

 
 
私の心は、
 
 
 
「なんとなく、このまま世界が終わってくれないかな…」
 
 
 
という思いでした。
 
 
 
「このまま静かに世界が終わってくれたら、
なにもかもから逃げられるのに…」
という感覚でした。

 
 
その一方で、母親の顔に
少しずつ不安が見え隠れするようになります。
 
 
はじめのころは、母親も、
たいしたことのないように考えているようでした。

 
 
「ちょっと、学校に行きたくないのかな…」

 
 
その程度に考えていたのでしょう。

 
 
私の家族は、
父の仕事の関係で土地を転々としていたので、
転校を余儀なくされている息子に
「申し訳ないな」という思いもあったんだと思います。

 
 
「転校して、新しい学校になじめなくて、
少し学校が嫌になっているんだろうな…」

 
と、その程度に考えていたのかもしれません。

 
 
本当のところは分かりませんが、
とにかく初めの頃は、母親は落ち着いていました。
 
 
 
その表情は、
「私の息子が不登校になんて、なるはずがない」と
訴えかけているようにも見えました。

 
 
でも、そんな母の気持ちは、
私の手によって無残にも切り刻まれていきます。

 

 



 
 
 
 
 
 
 
私には分かっていました。

 
 
現実を直視したくない母親の気持ち。
 
 
 
直視せずにいるうちに、
自然と解決してほしいと願う気持ち。

 
 
そのような気持ちは、
言葉に出さなくても自然と伝わってきます。
 
 
 
皮肉なことですが、親子である以上、
分かりたくないことまで分かってしまうのです。


 
「あそこのお子さん、登校拒否らしいわよ…」


 
世間から冷たい目で見られる恐怖感。
 
 
 
自分が親として失格とみなされる情けなさ。
 
 
 
そういった負の予感を感じている…
 
 
 
でも、その予感を感じないようにしている…

 
 
その雰囲気が、当時の私にとってはツライ現実でした。


 
 
「母親だったら、
僕がどんな状態でも愛してくれるんじゃないの!?」


 
 
という怒りにも似た悲鳴が、
胸の中でずっと鳴り響いていました。
 
 
…その悲鳴が胸の中にとどまらなくなるのは、
時間の問題です。
 
 
 
 
 

 

 

 

 

 

 

 

【第4回】 みんなで地獄に向かって

             歩いていくかのように…


 
 
母親の顔色の変化。
母親の言葉の変化。
父親の顔色の変化。
父親の言葉の変化。

 
 
だんだんと、周囲が変化していきます。
 
 
 
まるで、
みんなで地獄に向かって歩いていくかのように…。

 
 
そのどれもが、私にとっては苦しい出来事でした。


 
 
明らかに、私が周囲の人間を苦しめている。
 
 
 
そう感じていました。
 
 
そう感じさせられていたと言い換えることもできます。
 
 
 
でも、どちらにしても、
“僕が悪者で周りは被害者”という意識が
心に浸透していました。
 
 
 
私の心にも、周りの心にも。


 
なんだか、周りの明かりが1つずつ消えていく感覚…。
 
 
ついさっきまでみんなで楽しく遊んでいたのに、
気がつくと、街の明かりが消え始めていて、
「早く帰らなきゃ…」と心細くなる感覚…。
 
 
でも、そこに帰る場所は無い。
 
 
明かりは消えていくばかりで、
灯される明かりは見当たりません。


 
 
しだいに私の心のなかには、
こんな思いが芽生え始めました。


 
 
「なぜ、僕が悪者にならなきゃいけないんだ?

むしろ、僕を悪者にする周りの人間が悪だ!
僕は僕を守るために全力で戦う」


 
この時から、
私と周囲の無益な戦いが本格化し始めます。

 
 
私にとって、周りは敵ばかりでした。
 
 
 
しかも、敵の全員が、
100%の愛情を武器にして攻めてくるのです。
 
 
 
なんだか、怪しげな宗教団体に洗脳されたかのように、
自分の行為を完全な正義と信じて
攻撃を仕掛けてくるのです。


 
 
「あなたのためを思って言っているの」


 
 
「あなたのことを愛していなかったら、こんなこと言わない」


 
「とにかく学校に行けば、絶対後悔しないから」


 
「俺のためだと思って、学校に行ってくれないかな」


 
「君のためだったら、何でもするよ。何をすればいい?」


 
そんな言葉は求めてない。
 
 
 
みんな自分のことばっかじゃん。
 
 
 
本当に僕のことを考えてくれるなら、
 
 
 
 
自分の意見を主張するんじゃなくて、
僕の気持ちを知りたくなるんじゃないの!?

 
 
そんな思いでした。

 
 
 
 
 
【第5回】 とてもとても切なかった… 
 
 
 
 
いつものように朝起きると、
そこには悲しそうな目をした母親がいました。
 
 
 
 
その目は何かに恐怖を感じているかのようにも見えます。
 
 
 
 
なぜ、そんな目をしているのかは聞くまでもありません。
 
 
 
 
 
息子が学校に行かないから…。
原因は、それだけです。
 
 
 
 
 
父親も同じでした。
 
 
 
 
ただ、父親の場合、
恐怖を感じているような表情ではなく、
どちらかというと怒りを感じているように見えました。
 
 
 
 
なぜ、学校くらい行けないんだ!
 
 
 
 
なんて根性が無いんだ!
 
 
 
 
そう、無言で訴えかけているように感じました。
 
 
 
 
 
私は、そのような目をした両親を見れば見るほど、
ある種の憎しみを感じました。
 
 
 
 
 
なんなんだ!この人たちは!
 
 
 
 
学校に行かないだけで、こうも態度を豹変させるのか?
 
 
 
 
それでも親かよ!!
 
 
 
 
息子が本当に苦しいときに、
さらに追いつめるようなことをするなんて、ひどいよ。
 
 
 
 
ひどすぎるよ。
 
 
 
 
 
心の内側で、叫び声の数とボリュームが増していきます。
 
 
 
 
 
破裂しそうでした。
 
 
 
 
誰か助けて!という思いでした。
 
 
 
 
ただ、その破裂しそうな感覚が臨界点まで達すると、
今度は一気に脱力しました。
 
 
 
 
ただ、ただ、切なくて…
 
 
 
 
切ないだけの感覚に支配されました。
 
 
 
 
しだいに、私の心は閉じていきます。
 
 
 
 
しかし、
表面上は心を閉ざしていないように見せかけました。
 
 
 
 
人生の敗北者のように扱われたくなかったためです。
 
 
 
 
 
僕はまともな人間で、
そのまともな人間が不登校を選択しているんだ!
 
 
 
 
 
そうアピールするために、
心を閉ざしていないかのように必死で取り繕いました。
 
 
 
 
でも、心の奥底で着実に、
周囲と自分の境界線に分厚い壁が
できあがりつつありました…。
 
 
 
 
 
 
 
【第6回】 負けない!
 
 
 
学校に行かない日々…

 
 
しだいに、
私が学校に行かないことは
周囲の人間に浸透していきました。
 
 
 
担任の先生、両親、祖父母、学校の友達…
 
 
 
不登校の事実が広まっていくと、
何人かの登場人物が、
勝手なことを好き放題言ってきます。


 
 
担任の先生 : 「このままだと卒業できるかどうか
           分からないよ」


 
 
両親 : 「頼むから、学校に行ってくれ」


 
 
 
祖父母 : 「戦後は、学校に行かないという選択肢は
        無かった」


 
 
学校の友達 : 「(ニヤニヤしながら)
           おー、そろそろ学校来いよ!」


 
 
 
私は、そういうことを言われるのが、本当に嫌でした。

 
 
 
見方によっては、
私は、“学校に行けない生徒”と映るのかもしれない。
 
 
 
でも、私としては、
学校に行かないことを選択しているだけ。
 
 
 
それだけなんだ!
 
 
 
それなのに、
どうして、問題児を見るような目で見るんだ!

 
 
 
そう強く思っていました。
 
 
 
世界中に響きわたるボリュームで、
大声で叫んでやりたい思いでした。
 
 
 
どうでもいいから、この思いを外に吐き出したい!
 
 
 
彼かまわず、この気持ちをぶつけてやりたい!
 
 
 
そんな思いがあふれていました。

 
 
 
でも、そんな大声は出せません。
 
 
 
大声どころか、小さな声でも言うことができません。
 
 
 
周りが敵ばかりに見えるからです。
 
 
 
自分の本音を知られてしまうと確実に攻撃を受ける
(と感じる)からです。
 
 
 
実際、私が本音を話すと、徹底的に攻撃されました。

 
 
 
「お前が悪い!」「お前が悪い!」「お前が悪い!」

 
 
 
表現は違っても、言っていることは同じです。
 
 
 
「お前が悪い!」という内容を
表現を変えて言ってくるだけです。
 
 
 
だから、決意しました。


 
「僕は絶対に負けない!」


 
それから、私は勉強を始めました。


 
「勉強で勝って、僕の正しさを証明してやる!」
 
 
 
「学校に行かなくても充分に生きていけることを
証明してやる!」

 
 
誰も知らない私の心の奥で、
秘かに誓いが刻まれました。



 
ところが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【第7回】 ところが…


 

 

 

「勉強して見返してやる!」と強く決意したものの、
その先の道のりは険しいものでした。


 

 

 

 

人間、どうしてもラクなほうに流されがちです。

 

 

 

勉強するどころか、テレビばかり見ていました。

 

 

 

 

ずっと、家でテレビを見ているだけ…。


 

 

 

 

でも、そんな生活、ラクなのは最初だけです。

 

 

 

 

しだいにイライラがつのり、

つまらない毎日に変わっていきました。

 

 

 

 

身体も頭も疲れないので夜になっても眠れず、
昼夜逆転の生活に変わっていきそうな気配でした。


 

 

 

 

でも、この頃は、

かろうじて規則正しい生活を維持していました。


 

 

 

 

のちに完全に昼夜逆転してしまい、

地獄のような毎日を生きることになるのですが、
それは、まだ先のことです。

 

 

 

 

不登校を始めて間もない頃には、

まだ身体が規則正しい生活を覚えていて、
そう簡単には昼夜逆転の生活に変わりませんでした。

 

 

 

 

ただ、少しずつ、

夜の寝つきが悪くなっているような感覚を

感じていましたが…。

 


 

 

 

 

「勉強しなければ…」と思いながら、

身体はラクなほうに流されていく…。

 

 

 

 

そんな自分を情けなく感じる日々。


 

 

 

 

 

つらい。


 

 

 

 

 

学校に通っている他生徒との距離が、

どんどん開いていく。

 

 

 

 

僕も勉強しなければ。
でも、一人で勉強をつづけることは、想像以上に難しい。


 

 

 

 

つらい。


 

 

 

 

 

どうすればいいかは分かっているのに、
コントロール不能状態にもがく日々がつづきます。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

【第8回】 僕は、いったい

       どうしてしまったんだろう…?

 

 

 

 

 

 

自分自身をコントロールできないことにもがきつづける日々。

 

 

 

 

しだいに、私は私を責めていました。

 

 

 

 

 

 

どうして、できないんだ!

 

 

 

 

 

周囲の人間に負けないと誓ったはずだろ!
 

 

 

 

 

 

頑張らないと、あいつらに負けてしまうぞ!
 

 

 

 

 

悔しくないのか?
 

 

 

 

 

なんとかしろ!なんとかしろ!…

 

 

 

 

 

誰よりも何よりも厳しく、

自分で自分を責めつづけていました。

 

 

 

 

 

誓いを破った自分を責めていました。

 

 

 

 

 

頑張れない自分をダメな奴だと感じていました。
 

 

 

 

 

そうして、だんだんと、だんだんと、

自分が劣った存在であるように思いこんでいったのです。

 

 

 

 

 

気がつくと、敗北感のかたまりのようになっていました。

 

 

 

 

 

他人に負けたというよりも、

自分に負けた感覚で一杯になっていました。


 

 

 

 

悔しい。

 

 

 

 

 

悔しい…けど、なぜか身体が思うように動かない。


 

 

 

 

 

苦しみと自己嫌悪と敗北感が、

ぐろを巻く蛇のように私の頭にからみつきます。

 

 

 

 

 

そして、その蛇たちは、なかなか離れずに、

私の思考を占領していきました。


 

 

 

 

蛇たちを退治できたのは、

それから10年以上経った後のことです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【第9回】 助けて!

 

 

 

 

私は助けて欲しかった。
 

 

 

 

 

見たこともない蛇たちに支配されるなかで、

言い表せない恐怖と戦いながら、

必死に助けを求めていた。

 

 

 

 

 

誰か助けて、誰か助けて、誰か助けて…

 

 

 

 

 

 

どうしようもなく不安で、どうすることもできなくて、

とにかく助けてもらうしか選択肢がないように思えていた。
 

 

 

 

 

でも、いくら待っても、その助けはやってこなかった。

 

 

 

 

 

それもそのはず。

 

 

 

 

私は、自分が助けを求めていることに

気づいていなかったからです。

 

 

 

 

 

その頃の私は、本当の私を知りませんでした。

 

 

 

 

 

 

心の奥底では助けを求めているのに、

それに気づかないフリをして、

何食わぬ顔して強がっていました。

 

 

 

 

 

 

強がっていることも認めたくないので、

私は私をだまし続けました。

 

 

 

 

 

 

「僕は強いんだ」「僕は強いんだ」と言い聞かせ、

強い自分であることを信じこんでいました。

 

 

 

 

 

 

だから、何も解決しません。

 

 

 

 

 

 

ただただ時が過ぎるなかで、蛇の数が増え、

からみつく力が増し、

とらえられたままの状態が続きました。

 

 

 

 

 

 

養分を吸い取られるように真の自信を失い、

それを補うかのように偽の自信を埋め込む。

そんな日々が淡々と続いていったのです。

 

 


 
 
木村優一
Yuuichi  Kimura